わが国の難民認定率

紛争や人権侵害のため、母国に住めず日本に難民申請する人は増加傾向にあります。申請者数は、ピークの2017年に1万9,629人となり、2010年に比べ16倍に達しています。しかし、日本の難民認定率は低いままで、2019年は1万375人の申請に対し、認定は44人と、0.4%にとどまっています。56%のカナダ、46%の英国に比べ低水準が際立っています。
2002年に、中国の日本総領事館に北朝鮮の脱北者が駆け込む事件が発生し、それを機に難民の申請要件を緩和し、認定前の仮滞在を可能にした改正入管法が2004年に成立し、申請がしやすくなりました。政府は、2010年に申請者の就労も一律で認めたため、年間1,000人程度だった申請者数は、2014年には5,000人になりました。
しかし、認定されず在留期限が切れて日本に残る不法残留者は、今年1月時点で2017年に比べ3割多い8万2,868人に達しています。そうした人は摘発され、帰国するまで原則として入管施設にとどまっています。難民申請を繰り返す人が多く入管施設は逼迫しています。入管法改正の背景には送還忌避があとを絶たない状況があります。
現在は認定申請すると、回数や理由に関係なく送還できません。強制送還が可能になると収容者は減りますが、帰国先で迫害を受けかねません。政府・与党は、入管施設での長期収容を防ごうと出入国管理法の改正を目指しましたが、野党が反発し今国会での成立を見送りました。しかし、長期収容の問題は残ったままです。

(2021年5月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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