がんの10年生存率の公表

国立がん研究センターは、がんの10年生存率を初めて公表しています。2008年にがんと診断された24万人の、その後を追いかけた調査をまとめています。胃や大腸など15種のがんについての10年生存率を調べ、全体では59.4%でした。がんの種類によって生存率はかなり異なり、前立腺がんでは98.7%、乳がんでは87.5%でした。一方で、小細胞肺がんは9.1%、すい臓がんは6.5%と厳しい数字です。
胃がんでは、病気の初期にあたるステージ1で見つければ、10年生存率は9割ほどと高率ですが、体の他の部位にがんが広がったステージ4という診断を受けると、6.9%に低下してしまいます。また、前立腺がんは、10年生存率は98.7%と高いのですが、ステージ4だと44.7%まで低下します。コロナ禍で定期健診を受ける人が減っていますが、がん検診を忘れないようにしなければなりません。毎年日本人の3人に1人ががんで亡くなっています。
日本人の約半数が、一生に1度はがんを患うとされていますが、10年生存率を見ても分かるように、不治の病ではなくなってきています。ここ数年で、がん細胞を狙い撃ちする分子標的薬や、体内で異物を取り除く免疫の力を利用した免疫チェックポイント阻害薬など、治療の技術はどんどん進んでいます。

(2021年6月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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