新型コロナウイルスの感染拡大が続いているにもかかわらず、オンライン診療への対応が広がっていません。厚生労働省の発表によれば、登録医療機関数は15.2%と、2020年12月末から0.2ポイントの微増にとどまっています。
浸透が遅れる一因は、医療機関の収入となる診療報酬の低さです。オンライン診療の報酬は、コロナ禍で臨時に上乗せしていますが、対面に比べると安く抑えられています。医療機関にとっては、対面の方が収益を上げやすくなっています。システム導入などに医療機関側に費用負担が発生する上、通常の対面診療を削って医師の時間を確保したりする手間もかかります。
オンラインの遠隔診療が広がると、地域で患者を集めて安定した経営を目指す従来の医療秩序が壊れるとの見方もあります。競争力のある医療機関に患者が集まる流れが加速する可能性を警戒している面もあります。日本医師会も、オンライン診療を強力に推し進めていないことも一因となっています。
政府は、2020年4月にオンラインを含む遠隔診療を時限措置として全面解禁しました。コロナ前は認めていなかった初診患者でも認めました。当初1カ月間で4千以上の医療機関が新たに遠隔診療に対応しましたが、その後の登録機関数は約1万6,000台でほぼ横ばいが続いています。初診から対応するのは約7,000程度で全医療機関に占める割合は6%強にとどまっています。
(2021年6月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)