子どもの貧困の解消

わが国は、他の先進国と変わらず不平等な社会になってきています。親の所得や社会階層により、受けられる教育が大きく異なり、格差は幼児期から始まっています。日本の子どもの貧困率は約14%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均を上回り、ひとり親世帯の貧困率に至っては50%超と国際的にも最悪の水準に達しています。
子どもの貧困を解消し、全ての子どもが教育などの必要なサービスを享受できることは、社会全体に大きな利益をもたらすことになります。全ての子ども達が、教育、保育、医療などの必要なサービスを受けるとともに、一定の衣食住が保障されなければなりません。さらに胎児から未就学児までを特に手厚く、社会全体で支援するという政策が必要となります。
米国シカゴ大学の研究によれば、貧困家庭の子ども達に幼児教育を受けさせた結果、高校卒業率が上がり、40歳時点での就業率と所得が高まったとされています。さらに、重犯罪による逮捕や生活保護利用は減少しました。税増収と社会保障支出などの削減につながり、社会全体にも有益です。わが国の研究でも、2歳時点での保育所通いは言語発達を促すだけでなく、社会経済的に恵まれない子どもの多動性と攻撃性を減少させることが分かっています。
幼児教育は、社会経済的に不利な家庭の子どもにこそ大きな効果が見込めます。平等性の観点に加え、費用対効果の観点からも無園児を減らす取り組みは有意義です。生活保護世帯は保育・幼児教育が無償化されていますが、それだけで必要な幼児教育は届けられていません。幼児教育の義務化といった踏み込んだ施策が必要となります。また、0~2歳児に対する保育は、福祉だけでなく幼児教育としてその役割を持つべきです。

(吉村 やすのり)

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