子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンが使われ始めて10年が経過して、臨床上の効果が国内外で報告されてきています。しかし、国内では、厚生労働省が接種の積極的な勧奨を控えて、6月14日で丸8年も経ってしまいました。
子宮頸がんは、子宮の出口の子宮頸部にでき、生涯のうちで1.3%の女性が診断されています。子宮頸がんの95%以上は、HPVの感染が原因とされており、主に性交渉で感染し、5~8割の女性が一度は感染し、約1割の人で感染が持続します。子宮頸がんは20代後半から増え始めます。20~30代の女性では、2019年は人口10万人あたり1.32人も亡くなり、乳がんの1.92人に次いで多くなっています。
ワクチンは国内では2009年に承認されました。主にHPVの16型と18型の感染を防ぎます。最初の性交渉前の接種が有効とされ、小学6年から高校1年相当の女子を対象とし、2013年4月に定期接種になりました。しかし、接種後の長引く痛みや運動障害などを訴える声があり、6月に厚生労働省が接種を積極的に勧めることをやめてしまいました。
大阪大学の研究によれば、1994年~1999年度生まれは5~8割ほど接種していました。しかし、2000年度生まれは接種率は15%を切り、2001年度以降では0%に近くなってしまいました。しかし、昨年から、ワクチンの情報をまとめた厚生労働省のリーフレットを対象者に届ける自治体が増え、少しづつではありますが接種者は増え始めています。
(2021年6月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)