少子化の加速

2020年に生まれた子どもは過去最少の84万832人で、前年から2.8%減りました。厚生労働省によれば、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2020年が1.34で、5年連続の低下です。妊娠届の状況などから、2021年は出生数、出生率ともにさらに低下すると予想され、出生数は80万人を割る可能性も出てきています。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年にまとめた人口の将来推計では。2020年時点の出生数を約89万人と見込んでいました。実際はこの推計を大きく下回っています。将来の生産年齢人口(15~64歳)も推計より減少しており、日本の活力や経済力低下につながります。
政府は、今年の骨太の方針で、少子化の克服と産み育てやすい社会の実現を重点施策のひとつに掲げました。新たに子ども施策の司令塔となる子ども庁の創設にも動き始めました。子ども関係の施策は、厚生労働省や文部科学省、内閣府などが関わりますが、こうした省庁間の縦割りを廃し、総合調整機能を持たせる方針です。
子どもを取り巻く環境は厳しい状況が続いています。18歳未満の子どもの貧困率は13.5%と7人に1人の割合で、ひとり親世帯では5割近くに達しています。児童虐待も年々増加しています。若い世代は非正規で働く人も多く、経済基盤が安定しません。経済的な負担に加え、仕事と育児を両立する難しさや、女性に偏る育児負担も大きな要因です。
親となる世代は少なくなっており、出生率が少し上がっても、子どもの数は中々増えません。子育て環境を整えるための財政支援は必須です。子ども・子育てに関係する公的な支援を示す家族関係社会支出が、国内総生産(GDP)に占める割合を見ると、欧州諸国の多くは3%前後ですが、日本は1%台です。少子化を克服するためには、財源を確保するかは大きな課題です。
内閣府が、2020年度に子どもを産み育てやすい国だと思うかと聞いたところ、欧州ではそう思うが77~97%だったのに対し、日本は38%で、10年前の同様の調査から14ポイントも低下しています。わが国は、子育ては家族の問題という意識は強く、これが若い世代を孤立させ、子育てを困難にしています。財源確保のためにも、社会全体で子どもを支えるという意識の改革が必要です。

(2021年6月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。