厚生労働省は、初診からのオンライン診療の恒久化に向けた制度を提案しています。初診から認めるのは原則かかりつけ医としていますが、それ以外の医師も事前に健康診断情報を得るなどの条件付きで認めるとしています。秋までに詳細を詰める方針です。
厚生労働省のオンライン診療の初診恒久化に対し、日本医学会連合会は提案を出しています。問診と画面越しの動画のみで診断を確定することのできる疾患はほとんどないとしたうえで、対応が難しい場合には対面診療に切り替える必要性に言及しています。具体的には、風邪症状があって①コロナ感染者と接触がある場合、②感染地域に渡航した場合、③高齢者や慢性疾患など重症化のリスクがある場合などはオンライン初診に適さないとしています。
わが国でのオンライン初診は、2020年4月、新型コロナを受けた特例措置として時限的に解禁されました。しかし、電話も含めた遠隔診療に対応する医療機関は、全体の15%程度で横ばいが続いています。初診から対応するのは6%程度にとどまっています。日本が出遅れる要因として、対面診療と比較した場合の報酬面の低さを指摘する声が根強いものがあります。
世界の17カ国の精神科のオンライン診療の報酬をみてみると、英国や米国(ニューヨーク州)など12カ国で、オンライン診療の報酬が対面と同等以上でした。コロナを受けてオンライン診療を推進し、デンマークやドイツなど3カ国で、2020年5月時点には対面と同等以上に高まりました。
オンライン診療には医療機関側にシステム導入の費用負担のほか、対面とは別に時間を確保するなどの手間がかかります。報酬面がどうなるのか見えなければ、医療機関側も体制整備に踏み切れません。対面に近づけなければ普及は難しいと思われます。
(2021年7月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)