厚生労働省は、不育症患者に対する支援を強化します。晩婚・晩産化の進展で不妊治療を受ける人が増える一方、流産や死産を経験した女性が適切なケアを受けられずにいる現状があります。菅政権が掲げる不妊治療支援の一環で、悲しみや喪失感を支えるグリーフケアを、既存の妊産婦支援事業を利用してきめ細かく実施するとしています。
グリーフケアに利用できる既存の事業として、①不妊相談、②流産を繰り返す不育症支援、③出産後1年未満の女性や乳児向けの産後ケア、④乳幼児とその保護者、妊産婦の利用を想定する子育て世代包括支援センターなどを挙げています。
乳幼児と同じ場所でケア事業を行うと、子どもを失った女性が精神的に負荷を感じることから適切な配慮をするよう要請しています。また、子どもを失った女性に対し、生まれたことを前提とした母子保健サービスの連絡が届いてしまったケースを例示し、自治体内で死産届の情報共有を図るよう求めています。墓地埋葬法では、妊娠4カ月未満の胎児が亡くなった場合は遺体として扱われませんが、通知では社会通念上、丁重に扱うことが求められるとし、家族の心情に配慮するよう促しています。
最近、不妊に対しては様々な支援がなされるようになってきましたが、流産を繰り返し、子どもを持つことができない不育症のカップルに対し、光があたることはありませんでした。今回の厚生労働省の流産や死産を経験したカップルへの支援は大変重要です。
(2021年7月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)