ミトコンドリア病の治療

ミトコンドリア病とは、細胞内にあってエネルギーをつくる小器官ミトコンドリアの機能が低下し、脳神経や筋肉など全身の臓器の働きが損なわれる病気です。細胞の核とは別にミトコンドリアが独自に持つ遺伝子の異常が原因です。現時点では有効な治療法はありません。
難病の母系遺伝病であるミトコンドリア病の遺伝防止のため、紡錘体置換法(MST法)が開発されています。この技術は、ミトコンドリアに異常がある方の成熟卵子の核や核遺伝子(紡錘体)を、正常な卵細胞質に移植する技術です。前核期(受精直後から分裂までの時期)受精卵の核遺伝子を移植する方法(PNT)もあります。英国では臨床試験が行われています。
また、卵細胞の老化の原因として、ミトコンドリアの機能低下があるとすれば、この技術が加齢に起因する不妊症患者にも応用可能と考えられています。加齢に起因する問題の全てを解決できるわけではありませんが、安全性や倫理的な問題などがクリアされれば有用ではないかと思われます。また、卵子提供にはない、両親の遺伝的つながりを担保できる利点もあります。

(2021年7月4日 信濃新聞)
(吉村 やすのり)

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