日常的に人工呼吸器や胃ろうなどのケアが必要な医療的ケア児に対する災害時の対応が必要です。医療機器の電源確保や事前の準備など、自治体などで情報提供や相談窓口の開設といった取り組みが広がり始めています。医療関連団体は、ボランティアなど災害時に支援にあたる人たちにも必要な対応を知ってほしいと呼び掛けています。
医療的ケア児支援法で、行政による支援は責務に格上げされました。災害時に長時間の停電や断水などが発生すると、電気で駆動する機器を使っている在宅の医療的ケア児は命の危機にさらされます。医療的ケア児に対する災害時の支援は、自治体間でも差がみられます。新型コロナウイルス禍で、多くの医療的ケア児家族が社会的に孤立しました。医療材料・衛生用品などの不足も深刻です。災害時も医療機器を装着する子を抱えての避難は難しく、インクルーシブな共生社会をつくることが必要です。
障害者は、社会の改善すべき点を可視化し、テクノロジーや社会制度を成長させます。医療的ケア児支援は、全ての人が豊かな人生を送れる社会につながります。何ができないかではなく、何ができるかを個々が考えることが大切です。
(2021年8月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)