新型コロナウイルス感染症の症状の軽い人に対して、抗体カクテル療法が注目されています。米国の会社が開発し、ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ2つの中和抗体であるカシリビマブとイムデビマブを組み合わせた点滴です。海外での臨床試験では、肥満や基礎疾患など重症化リスクがある感染者に使うと、投与されていない感染者と比べて、入院や死亡のリスクが70%低くなったとされています。
この薬は世界中で求められていて、日本への流通量がまだ多くなく、政府がまとめて購入して医療機関へ必要に応じて無償で配っていますが、投与できる患者を限定しています。今のところ入院患者で、50歳以上や基礎疾患などの重症化リスクがあり、呼吸困難に対する酸素投与を始めていない人だけです。点滴薬のため投与中に管理が必要で、重いアレルギー反応であるアナフィラキシーなどの副作用を起こす恐れもあって投与後の経過観察は欠かせません。
(2021年8月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)