新型コロナウイルスのワクチン接種を巡って、海外で接種率が一定を超えると伸び悩む7割の壁が問題となっています。各国は接種の義務化や罰則の導入、打ち終えた人への特典などで接種を促しています。17日で接種開始から半年を迎える日本は、なお5割未満と遅れていますが、いずれ同じ課題に直面すると考えられています。
英国では、6月初旬に1回接種を受けた人口が6割を超えましたが、7割到達まで2カ月かかっています。イスラエルも5月に6割を超えましたが、まだ6割台で足踏みしています。米国やフランスも7割を前に頭打ち感を強めています。ワクチンによる集団免疫の獲得は、従来人口の6~7割が目安とされてきましたが、感染力が強いインドのデルタ型の広がりで、8~9割に上ると考えられています。コロナ禍を乗り越えるためには、7割の壁を超えて接種を進める必要があります。
接種率が低い若年層を中心に接種者へ特典などインセンティブを付与する動きが出てきています。米国では、新たに接種した人に100ドル(約1万1,000円)を配るよう地方政府に要請しています。英保健省は、配車サービスや飲食出前サービス専門サイトなど数社が、若年層の接種を促す割引などを提供すると発表しています。
インセンティブだけでは限界があるとの見方もあります。接種への反対論や慎重論が根強いため、接種の義務化など強制力で臨む国もあります。ギリシャは介護従事者に接種を義務づけ、受けていない場合は停職処分とするとしています。フランスは飲食店や飛行機などの利用時に接種証明などを示すことを義務づけています。
(2021年8月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)