世界で新型コロナウイルスワクチンの供給格差が一段と広がっています。バイデン米政権は、デルタ型の感染拡大を食い止めるため、3回目の追加接種を9月下旬から始めると発表しています。一方、国際的な枠組みを通じた途上国などへの分配は、目標の1割と低迷が続いています。人口100人あたりの接種回数は、高所得国が100回を超えているのに対し、低所得国は1.8回にとどまっています。
高所得国では、3回目接種の必要性が強調される中、WHOは、ブースター接種の必要性を裏付ける確かな科学的根拠はないとし、ワクチン供給の格差を長引かせるだけだと批判しています。ブースター接種を一時的にやめ、医療関係者の接種さえ終わっていない国にワクチンを回すべきだとしています。
この背景には、WHOが主導するCOVAXの供給の遅れがあります。COVAXは、高所得国などが資金を出して購入したワクチンを平等に配分する仕組みで、低所得国92カ国には無償提供するものです。しかし、2021年に20億回分を配る目標に対し、8月中旬時点で約2億回分しか分配できていません。COVAXへの依存度が高いアフリカでは、死者数が過去最悪の水準で推移し、ワクチン不足が深刻になっています。
(2021年8月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)