感染再拡大の動きを受け、政府は企業にテレワーク拡大を要請しています。パーソル総合研究所の全国2万人を対象に行った調査では、全国の正社員のテレワーク実施率は27.5%でした。昨年11月の前回調査の24.7%よりは増えていますが、昨年4月の27.9%と比べ微減にとどまっています。非正規社員の実施率は17.6%です。
大企業と中小企業では依然として対応に差がみられます。従業員1万人以上の大企業では、テレワーク実施率が45.5%に達しているのに対し、100人未満の中小企業は15.2%に過ぎません。昨年4月よりもその差は広がっています。
業種別の差も埋まりません。テレワークの導入が比較的容易な情報通信業は60%、専門・技術サービス業では40.9%に達する一方、現場作業が欠かせない医療・介護・福祉で5.4%、運輸・郵便業で11.1%にとどまっています。
欧米など主要国では、職務内容をあらかじめ細かく定めたジョブ型雇用が一般的になっています。テレワークに切り替わっても、仕事の進め方に大きな差は生まれません。一方、日本で標準的なメンバーシップ型雇用では、職務内容を細かく規定していません。上司が継続的に指示を与えるマイクロマネジメントで、出社を前提にした働き方になっています。業界団体や国が環境整備に乗り出さない限り、テレワークは今以上に広がらないと思われます。
(2021年8月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)