都内の一般病棟は約8万で、400床以上の大病院が約80あり、大学病院も20超もあります。高度医療を担う病院も多く、質、量ともに他の道府県を圧倒しています。このうち1月時点で、都が新型コロナウイルス患者用に確保したのは、全体のたった5%相当の約4,000床でした。その後、1.5倍超の約6,400床まで増えましたが、今回の要請で上積みを狙いましたが、追加分がわずか150床と成果は得られていません。
大病院の多い東京では、自分達が受け入れなくても、他の病院が対応するだろうと考え、消極的になる面があります。地方では、中核病院が断れば、患者は完全に行き場を失う緊張感があります。6,400床とされる確保病床も、フル稼働できていません。現在、都内には新型コロナウイルスに感染した約2万人が自宅で療養し、入院先などを調整中の患者も約7,000人もいます。入院患者は4,200人ほどで、病床使用率は7割ほどで推移しています。残る3割が使えずにいます。
病床確保を約束して補助金をもらっているにもかかわらず、コロナ患者の入院を断ったり、診療コストがあまりかからない軽症患者で病床を埋めたりする病院もあります。確保病床の7割で実際の入院患者の受け入れが限界に達する背景には、こうした問題もあるとみられます。
各病院に数床ずつ拠出してもらう積み上げ型には限界が見えています。都立病院、国立病院機構など公的病院や大学病院を中心に、重症者を集中して受け入れる病院群をつくることが必要です。日本医師会と東京都医師会は、大規模な臨床医療施設を都内につくるよう求められていますが、これまでコロナ禍の1年半もの間、医師会は病床確保のための何ら有効な対策を実施してきたと思えません。
(2021年9月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)