主要国は、経済が適度に成長する目安として、物価上昇率を2%程度にする目標を掲げています。新型コロナの感染拡大前は、米欧でも物価が上がりにくい状況が続いていました。しかし、経済活動の再開により、米国で5%以上、ユーロ圏でも3%と、歴史的な高い伸びをみせています。対照的に日本の物価は、マイナス圏での推移が続いています。日銀の予測では、2023年度の物価上昇率もプラス1%と、2%目標には遠く及びません。
日米のインフレ格差については、労働市場の差がかなりあります。日本はコロナ下でも雇用が維持されたため、消費需要が戻っても供給面ですぐに対応できます。しかし、米国は、急ピッチの経済再開で供給制約が残り、短期的に物価が上がりやすくなっています。インフレ懸念の高まりを踏まえ、米連邦準備制度理事会は年内の量的緩和の縮小を検討しています。
(2021年9月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)