年代によるエネルギー消費量の変化

大規模な国際調査によれば、10代後半から50代後半までエネルギー消費量はほとんど変化しないことが明らかになりました。生後8日~95歳の約6,600人を対象に、1日のエネルギー消費量を調べています。ヒトのエネルギー消費は、何もしなくても呼吸や体温維持などに使われる基礎代謝が5~7割を示しています。残りの多くは、体を動かす様々な活動で消費されます。
1日のエネルギー消費量は10代後半が最も多く、男性で平均3,415㎉、女性で平均2,480㎉でした。そこから50代後半までは、エネルギー消費量がほとんど変わりませんでした。60代以降は低下幅が大きく、90代では40~50代の26%減でした。基礎代謝も同様の傾向でした。
これまで中年太りは、加齢とともに基礎代謝によるエネルギー消費が減るのに対し、食事でとるエネルギーが過剰になることが原因の一つと考えられていました。若年と中年のエネルギー消費の変化は、予想に反して少なく、中年太りの理由は、代謝以外にある可能性があるとも考えられます。加齢による体質変化で、過剰なエネルギーが、体内に蓄えられるための中性脂肪として貯まりやすくなることなどが考えられます。
脂肪を除く体重あたりでみると、乳児のエネルギー消費量が最も多くなっています。生後12カ月の間に急増していき、1歳児は20代後半~50代の約1.5倍でした。乳児の成長のためには、この時期に十分な食事が必要になります。人間が一生に使うエネルギー消費量を想定できるため、世界全体で必要になる食糧の必要量も推測できるかもしれません。将来の人口予測や地域の人口と合わせて計算することにより、食糧難に苦しむ人を生ませないためには、最低限どれだけの食糧がいるかが分かり、計画的な食糧生産や配分につながるかもしれません。

(2021年10月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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