厚生労働省は、新型コロナウイルスへの感染を手軽に調べられ、結果も早く出る抗原定性検査キットの薬局での販売を特例的に認めています。医療用に承認された検査キットの市販は、コロナ流行時限定とはいえ異例なことです。背景には、ワクチン接種が進んだ段階で、経済活動再開を加速するのに活用したいとの政府の思惑があります。
抗原定性検査キットは、PCR検査などに比べ、感染していても陰性となる偽陰性が出やすく、購入時に薬剤師から使い方の指導を受け、感染対策を続けることなどを記した書面への署名が求められています。無症状者の使用は推奨されていません。症状がある人の検査キットの使用は、感染者を多く拾い上げ、感染拡大防止につながります。
政府は11月にも導入を目指すワクチン・検査パッケージで、ワクチン未接種者の陰性証明に活用することも検討中です。PCR検査を推奨しつつ、検査キットでも24時間以内の結果なら有効とする方針を示しています。接種を済ませた人が大半を占める状況になれば、偽陰性よりも陽性者を見つけることの意義が大きくなります。しかし、国の承認を受けていない検査キットも出回っており、国が精度を担保することが大切となります。面倒でも承認済みの検査キットを使うことが大前提となります。
(2021年10月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)