オルガノイド研究への期待

オルガノイドとは、単離された複数の細胞が相互作用によって自己組織化する、秩序を持ってできた立体構造を言います。形成された組織体が形態学的な特徴を発現していることから、ミニ臓器とも呼ばれています。多能性幹細胞として、1998年にES細胞、2006年にiPS細胞が樹立され、生体に存在する未分化の細胞である組織幹細胞を試験管内で維持・培養する技術が確立されたことで、オルガノイド研究は急速に進展しました。現在ほとんどのオルガノイドは、生物個体由来の多能性幹細胞または組織幹細胞から形成され、腸や肝臓のほか、脳、眼杯、肺、前立腺などさまざまな器官が世界中で作られています。
オルガノイドが生物学の発展に貢献した大きな要因として、特定のタイミングにおけるsnapshotではなく、連続的な動きを観察できることが挙げられます。この特徴は、病態の理解や医療への応用という面でも切り札になります。病態の理解は、疾病の状態を再現する疾患オルガノイドを作製できるようになって急速に進化しています。疾患オルガノイドは、創薬領域でも用いられています。Precision Medicineよりさらに個別性の高い、患者一人ひとりに最適な医療であるMy Medicineに、オルガノイドを用いることも可能です。創薬のほか、臓器移植、予測診断の分野でオルガノイドの活用が期待されています。

(2021年10月18日 週刊医学界新聞 第3441号)
(吉村 やすのり)

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