自己増殖型mRNAワクチンの開発

新型コロナウイルス感染症においては、mRNAワクチンが使用されています。mRNAは、体内でたんぱく質を作る際に、設計図の役割を果たしています。mRNAワクチンは、ヒトの体の中で新型コロナのたんぱく質を作らせます。このたんぱく質を抗原として免疫反応を起こさせ、本物のウイルスが体に入った時に素早く攻撃できるようにします。従来のmRNAワクチンは、ウイルスのたんぱく質のmRNAだけを体内に送り込みます。
新型コロナで広く知られるようになったmRNAワクチンに、新たな工夫を加えた自己増殖型(レプリコン)と呼ばれる次世代型が開発され、国内で複数の臨床試験も始まっています。自己増殖型は、ウイルスのたんぱく質のものだけでなく、それをコピーして増やすための増殖型のmRNAも組み込んでいます。そのため少しの量でも、ヒトの体内でmRNAを増やせます。現在のワクチンの10分の1~100分の1の量ですみ、必要な供給量を素早く生産できる可能性があります。
現在のmRNAワクチンは筋肉注射で打ちますが、開発したワクチンは皮内注射で打ちます。皮膚の表皮とすぐ下の真皮の間には、免疫細胞が多数存在します。ワクチンによって、抗体を作るだけでなく、感染した細胞を直接殺すなどの働きがある細胞性免疫という別の免疫反応を起こりやすくする狙いがあります。
自己増殖ワクチンのmRNAを増やす酵素に改良を加えて、摂氏30~35度で働くようにしています。このため、皮膚では働きますが、体温が高くなる体内では働きません。

(2021年10月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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