出自を知る権利の侵害にあたるか

東京都立の産院のミスで出生直後に別の新生児と取り違えられた都内の男性が、都を相手取り、実親と連絡がとれるかなどの調整や調査を求める訴訟を東京地裁に起こしました。都は取り違えを認めた判決確定後も、プライバシーを理由に実親を特定するための調査を拒んでおり、男性は出自を知る権利の侵害にあたると主張しています。
2005年の東京地裁判決、2006年の東京高裁判決は、いずれも産院での出生時に取り違えがあったことを認め、高裁判決では、産院の重大な過失で人生を狂わされたとして計2千万円の支払いを都に命じました。しかし都は、実親に関する情報提供は、相手の平穏な生活を乱すかもしれないとして拒む対応を続けてきています。
原告が今回の訴訟で都に求めているのは、実親に取り違えの事実を伝えた上で、原告と連絡先を交換する気持ちがあるかどうかを確認してもらうことにあります。実の親が会いたくないなら、それ以上は望まないとしています。これまでは匿名で記者会見に応じてきましたが、実名や自らの姿を報道してもらい、実親を探したいとしています。実親をどうしても知りたいという出自を知る権利が認められるかどうか問われる裁判です。

 

(2021年11月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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