警察庁は、自動ブレーキ機能などを備えた安全運転サポート車(サポカー)に限って運転できる免許を、2022年5月に創設します。サポカー限定免許の導入は、2020年6月に成立した改正道路交通法に盛り込まれました。一定の違反歴がある75歳以上を対象に課す運転技能検査の導入と並ぶ事故対策の柱です。サポカー限定免許は、運転免許を持っていれば、申請することで誰でも切り替えができ、免許の自主返納に踏み切れない高齢ドライバーの取得を想定しています。
運転免許の自主返納制度は、1998年に始まりました。2019年の返納件数は、全国で60万件超と過去最多を更新しました。近年、増加傾向が続いてきましたが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響もあり、55万2,381件に減少していました。地方の交通網が十分発達していない地域に返納をためらう高齢者は多く、運転に不安を抱える人々にとり、限定免許は日々の生活を支える新たな選択肢になり得ます。
運転者の過失による死亡事故は減少していますが、75歳以上の割合は増加し、事故全体の13.8%を占めています。社会の高齢化で、事故のリスクは今後も避けられません。このため、70歳以上のドライバーが免許更新の際に受講する高齢者講習などの機会を通じ、切り替えを呼び掛けるといった取り組みも検討します。
(2021年11月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)