通信教育大手のベネッセホールディングス(HD)の顧客情報が、大量に流出していたことが明らかとなった。さまざまな名簿業者を介して、情報は通信講座を手掛けるソフト開発のジャストシステムに移り、客にダイレクトメールにて送付された。ベネッセにあるデータベースから情報が取り出されていたことであり、データベースにアクセスできる社外関係者が不正に持ち出した。誰が持ち出したかの追求も必要であるが、個人情報がいとも簡単に流出するシステム自体に問題がある。これまでは紙教材が主体であったが、IT化で競争が激しくなった通信教育ビジネスの新たな問題点が浮き彫りとなった。
IT化が進むにつれ、データの集積が簡便になったが、その反面情報の漏洩が問題になっている。情報の流出問題は跡を絶たない。いかに情報管理を厳密にしても人が関与する以上、情報が流出の可能性を完全に否定することはできない。慶應義塾大学病院では非配偶者人工授精(AID)が60年以上実施されてきたが、クライエントやドナーの情報は一切IT化されていない。それはIT化されれば情報が漏洩する可能性があるため、情報すべて手書きによる台帳に記載されている。これら情報が流出すれば、今回のような問題では済まされない。その台帳にアクセスできるのは数名に限っている。厳密な情報管理のためには莫大なる労力が必要となる。
(吉村 やすのり)