コロナ禍での人工妊娠中絶の実態調査

厚生科学研究によれば、2020年1~9月の人工妊娠中絶件数は、どの月においても前年と比較して有意に減少しています。人工妊娠中絶件数は毎年減少しており、その毎年の平均減少率(2013~2019年)は2.67%と算出されていますが、今回の平均減少率12.8%は、この平均減少率に比較して大きく、特に5~7月は著明でした。
厚生労働省母子保健課の全国調査で2020年5~7月に妊娠の届け出件数が大幅に減少したことから、出生数は減少しつつも予期せぬ妊娠等による人工妊娠中絶件数の増加が懸念されていましたが、本研究による調査結果は予想とは異なるものでした。これは一般男女がパートナーとの性交や妊活を控え、さらに不妊治療も抑制したものと推測されます。
コロナ禍においては、国際的な女性への暴力の増加や自粛下の孤独や貧困、失業などの進行等が報道されていました。しかし、わが国における新型コロナウイルス感染症および自粛の影響による人工妊娠中絶件数等への影響は、予想とは異なり大幅に減少し、いわゆる中期中絶件数の増加は認めず、強制性交等被害件数も増加は認められませんでした。

(家族と健康 秋号 11月1日)
(吉村 やすのり)

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