AIを活用した医療サービス

医師の診察をデジタル技術で支援するスタートアップが相次いでいます。国内の医療体制は、労働条件が恵まれた都市部に医師が集中する一方、地方は医師不足が深刻化しています。新興勢は、独自の技術やサービスで地方の医療現場を下支えしようとしています。
厚生労働省の推計によれば、2036年に全国で約5,300~3万5,000人の医師が不足する可能性があるとしています。必要な医師数に対する配属数の比率を試算すると、東京都は必要数の1.4倍の医師を過剰に抱える一方、充足率が最も低い福島県では、必要人数の約3割しか満たさないとされています。

矢野経済研究所によれば、国内の医療ICT市場は、2023年度に198億円と、2018年度の1.6倍に拡大する見通しです。海外でも、診察支援スタートアップは活躍の場面を広げています。医師が不慣れな病気であっても、AIが適切な治療方針を導き出し、現場を後押しすることができます。地方での医師不足に対して、厚生労働省は大学医学部に地域枠・地元枠を設定するなどの施策を進めていますが、現状は十分とは言えない状況のままです。各地で良質な医療サービスを維持するためには、制度改革と合わせてスタートアップの技術の活用が必要となります。

(2021年11月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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