日本は研究力の低迷が叫ばれて久しく、国立大学が2004年度に法人化され、国の運営費交付金の削減が続いています。近年は特定分野に研究費を重点配分する公的研究費助成の選択と集中路線が強化されるなどして、研究環境が悪化していると指摘されています。
こうした状況の打開策として打ち出されたのが、大学の支援金を運用益でまかなう大学ファンド構想です。2020年7月、世界最高水準の研究環境の整備や若手研究者の支援を実現するため、研究大学の財政基盤を強化する10兆円規模の基金創設が決まりました。
政府は、国立研究開発法人の科学技術振興機構内にファンドを設置することを決め、資金の運用開始は2021年度末の予定です。当初は政府が出資した5,000億円と、財政投融資4兆円を合わせた計4.5兆円から始め、将来的に10兆円規模に拡大される見通しです。対象は特定研究大学とする予定ですが、ファンドの配分対象から漏れた大学に対しては、産学官の連携に力を入れる大学などに対する支援策を用意します。
(2021年11月18日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)