性別変更訴えの是非

最高裁第三小法廷は、10歳の娘がいる男性の戸籍上の性別変更を求めた家事審判で、会社員の訴えを退けました。戸籍変更を認める性同一性障害特例法が定める未成年の子どもがいないことという要件の違憲性が争点となりました。しかし合憲とする初判断を示しました。
2004年施行の特別法では、性別変更には①20歳以上、②独身、③子どもがいない、④手術で精巣・卵巣を摘出、⑤変更後の性別の性器に近い外観を備えるという要件を満たし、医師2人の診断書を添えて家裁に申し立てる必要があるとしています。子どもがいないという要件は社会や子の混乱を防ぐためなどとされていましたが、2008年の改正で③は未成年の子に緩和されていました。
家族の混乱を防ぐためという子なし要件には、そもそも合理性がないと思われます。親には自分らしく生きて欲しいと願う子どもの声を多く聞きます。未成年だから混乱するという理屈は抽象的であり、特別法の改正について国会で審議をすべきと思われます。

(2021年12月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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