南アフリカでオミクロン型が広がり、接種率の低い地域ほど変異が生まれやすい可能性が指摘されています。ウイルスの変異が発生した経緯は不明ですが、接種率の低いアフリカで感染拡大が長期化していることが一因です。南アフリカでは、新規感染者の7割がオミクロン型と言われ、アフリカ各地では欧米で猛威を振るうデルタ型に代わって、主流になっている可能性が高いとされています。
先進国では3回目接種が始まっており、低所得国にワクチンが届きにくくなっています。先進国だけのワクチン普及では、パンデミックを終わらせることはできず、低所得国へのワクチン提供に取り組む必要があります。米国は、少なくとも11億回分を低所得国に寄付する予定を公表し、既に25%にあたる2億7,866万回分を110カ国に以上に発送しています。
オミクロン型の登場は、国際社会が高所得国へのワクチン接種を優先し、低所得国への普及を後回しにしてきたツケとも言えます。ウイルスがさらに変異を続けて、世界で脅威が増すのを防ぐためにも、ワクチンの供給拡大や製造体制、物流網構築などを、国際社会で協調して整備していくことが一層大切になってきます。
(2021年12月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)