企業側と働き手の双方で、学び直しの重要性が高まっています。企業がDXを進めるためには、多くのデジタル人材が必要になります。日本企業の多くは、これまで情報システムの開発をIT企業に任せ、社内に専門人材を育ててきませんでした。中途採用では人員確保に限界があり、既存の社員を再教育することが急務になっています。
日本の働き手は、自分のスキル水準を明確に把握できていないという問題があります。情報処理推進機構の調査によれば、自分のスキルレベルが分からない人が34.3%もいました。米国の2.7%やドイツの6.1%に比べて極めて多くなっています。自分のスキルの競争力について、自信のない人は半数にのぼっています。
日本経済新聞社による社長100人アンケートでは、67.6%の企業がリスキリングを実施していると回答しています。製造業も小売業も、現場で集まる大量のデータを分析する人材が今後ますます必要になってきます。人材への投資姿勢は、企業を評価する重要な要素になってきています。デジタル化に対応して研修・教育制度を抜本的に見直すことが重要です。
厚生労働省の能力開発基本調査によれば、Off-JT(職場外訓練)の受講率は年齢が高くなるにつれて減少しています。デジタル化は、全ての人の仕事を一変させる可能性があります。新しい仕事に備えるために働き手の意識改革も重要になりそうです。
日本の労働生産性は、主要7カ国で最も低い水準にとどまり、賃金が伸び悩む原因となっています。リスキリングは生産性を高めるうえで有効で、働き手は労働市場での価値が高まるため、より良い処遇を求めて転職もしやすくなります。成長分野への人材が移動し、雇用の流動性を高める契機にもなります。
(2021年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)