生みの親が育てられない子どもを守る社会的養育の中で、特定の大人との信頼・愛着関係を築くことができる里親制度の役割は大切です。厚生労働省が設置した有識者会議は、2017年に社会的養育における里親の委託率を、就学前の子どもに関して75%以上、学童期以降は50%以上とする目標を掲げ、年々委託率は上昇しています。
里親制度は、児童養護施設より家庭的な成育環境を与えられるとして、政府や各自治体が近年制度を推進する中、長野県で起きた虐待事件が起きています。養育する少女に性的虐待を繰り返したとして、監護者性交と児童福祉法違反の罪で、懲役5年6月の実刑判決を受けました。愛情をはき違え、里親という立場を利用した卑劣かつ悪質な行為として厳しく指摘されています。
里親養育は、家庭内のため外部の目が届きづらくなります。特に性被害は訴えにくく、面談などで子どもの状態を把握していく必要があります。里親希望者が経済面と子育てへの熱意などが評価されれば、基本的に認定される現状に対し、不適格者を見極める方法の構築が不可欠と思われます。社会的養育の子は、もともと複雑な事情を抱えている場合も多く、さらなる心身の傷を負わせる行為は決して許されるものではありません。
(2021年12月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)