社会保障制度の2022年危機―Ⅱ

社会保障給付費の増加
0~64歳の人が1年間に使う医療費は平均約19万円ですが、65~74歳は約57万円、75歳以上は約93万円に跳ね上がります。介護費も高齢になるほど増えてきます。医療、介護、年金などの社会保障給付費は、2025年度には約140兆円と、10年間で約2割も増える見通しです。2040年度の社会保障給付費は、今の約1.5倍の約190兆円と推計されています。
団塊世代が全て75歳以上になる2025年度までに、介護職員を32万人増やす必要があります。介護の現場で働く人は、仕事がきつい割に賃金が低く、担い手不足が深刻です。医療や介護の現場を担う職員の人手不足が深刻になるとともに、収入の引き上げは最優先課題です。持続的に賃金を増やすには、診療報酬や介護報酬の加算など制度上の対応が必要になります。現役世代の保険料負担増を抑えるため、医療費の無駄をなくす改革を同時並行で進めることが必要になります。
今後、力を入れるべきは、社会保障の支え手を増やすことです。企業に定年の廃止・延長を促し、会社勤めの高齢者の厚生年金を減額する仕組みを見直すなど、意欲のあるシニア層が働き続けやすい環境づくりが必要です。保育所の充実などで子育て世代を支援し、女性の就業率を高めることも大切です。

(2021年12月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。