平均寿命の延長

人類の歴史は病気との闘いです。不治の病だった結核は、抗生物質ストレプトマイシンの登場で劇的に死亡率が下がりました。戦後しばらく日本の死因のトップだった脳卒中は、生活習慣の改善や降圧剤の普及で減少してきました。
科学技術を前提に予想された2040年の社会では、血液によるがんや認知症の早期発見、老化にともなう運動機能低下の予防・治療、視覚、嗅覚、記憶力などを拡張する小型装着デバイス、3Dプリンティング技術による再生臓器が実現するとされています。健康寿命は延び、多様な人が暮らすボーダーレス社会になると思われます。
医療や科学の進歩とともに日本の寿命は延びてきています。2050年の平均寿命は女性90歳、男性84歳が見込まれています。一方、その時には高齢者1人を15~64歳の1.4人で支えることになります。現在は高齢者の1人を15~64歳の2人で支えていますが、2050年には1.4人で支えることになります。若い世代の未来に対する期待は必ずしも高くありません。長寿を希望しない若者が増えています。日本は長寿になりましたが、若者には希望を持ちにくいフューチャーロストの国になっています。
日本の若い世代の閉塞感は、科学技術だけでは解決できません。科学技術の進歩によって選択の幅が広がり、それぞれの人が何が幸福だと思うか深く考え、それを追求できる社会になることが期待されます。

(2022年1月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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