働く女性は増えてきています。総務省の労働力調査によれば、就業者と職探し中の人を合わせた労働力人口の割合は、1990年に30~34歳で52%でしたが、2020年には78%に高まっています。15~64歳の女性の労働参加率は、新型コロナウイルス禍前の2019年にOECD平均で65%であり、日本は73%で米国などを上回っています。結婚や出産を機に落ち込むM字カーブは確実に解消に向かっています。
しかし、働きやすさのジェンダー格差は根強く残っています。M字カーブがなだらかになる陰で、労働時間は二極化したままです。女性は、フルタイムと短時間の2つの山によるもう一つのM字カーブがみられます。2020年に、男女ともに最も多い就業時間は週40~48時間でした。男性で46%、女性で32%を占めています。次いで多いのは、男性が49~59時間の14%なのに対し、女性は15~29時間の26%に、1~14時間の14%が続いています。
週5日勤務で計算すると、男性は1日8時間以上働く人が就業者の7割を占めています。女性は4割にとどまっています。女性は非正規雇用が多いことが背景にあります。30~34歳の人口に占める正社員の割合は、男性が74%、女性が44%です。この差は年齢が高まるほど広がります。45~49歳では、男性が72%、女性が32%と40ポイントの開きがあります。
国際労働機関(ILO)によれば、週平均の労働時間の性差は主要7カ国で日本が最も大きく、10時間を超えています。米国やフランスは5時間ほどです。日本は正社員で働く負担があまりにも重く、日常的に残業があり、定時で帰れることは少なくなっています。キャリアパスとして定着してきた国内外の転勤は、家庭生活との両立が難しく、そのしわ寄せが女性に偏っています。家事、育児は女性が担うという古い役割意識も残っています。
(2022年1月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)