少子化対策の一環として育児休業制度の拡充が相次ぎ、受給者も増加の一途をたどっています。そのため、雇用保険の柱の一つである育児休業給付の財源が2025年度にも不足する恐れが出てきています。
育休給付は、最長で子どもが2歳になる前日まで受け取れます。給付額は、180日までは休業前賃金の67%、181日目以降は50%相当です。主な財源は保険料で、現在は賃金総額の0.4%を労使が折半しています。
給付総額は拡大が続いています。2020年度は約6,400億円と5年間で6割増加しました。2022年10月には、男性の育児休業取得を促す出生時育児休業も始まります。過去の平均的な伸び率で推移すると、2023年度に支出が収入を上回ってしまいます。2025年度には賃金残高が575億円足りなくなります。
育休の支援は雇用の安全網であるだけでなく、国の少子化対策の一環でもあります。育休中の経済的支援は、国の一般会計でまかなうべきだとの意見もあります。雇用保険で運営している以上、保険に加入できないフリーランスなどの個人事業主らが給付を受けられないことも課題になっています。所得保障がないため、産後すぐ復職を迫られるケースもあります。社会全体で子育てしやすい環境の整備は急務です。
(2022年1月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)