GIGAスクール構想の空回り

GIGAスクール構想は、2019年10月の消費増税に伴う経済対策として前倒しで進められまし。タッチパネル機能付きのパソコンやタブレットに、約3,000億円の予算を計上し、全国自治体の98%で1人1台が実現しました。校内の通信ネットワークを整備したり、ICT支援員を雇ったりする費用を含めて、総額で約4,800億円の税金を投じています。大がかりな政策の狙いは、教育のICTの遅れを挽回することでした。
経済協力開発機構(OECD)の2018年調査によれば、日本は国語の授業でデジタル機器を使う割合が14%にとどまっています。毎日かほぼ毎日コンピューターで宿題をする割合はわずか3%で、いずれも主要国で最下位に甘んじています。コロナ緊急事態宣言下のオンライン授業でも、2021年9月に夏休みを延長したり、時短授業をしたりした小中学校のうち、文部科学省の調査に実施すると回答したのは約3割でした。国によって感染状況が異なり単純比較できませんが、レノボ・ジャパンの調査によれば、インドネシアやフィリピンを下回っています。
1人1台の実態について、国からの発信もまだ弱く、現場で活用はほとんど進んでいません。教室や家庭で、端末を具体的にどう使うかに強制力はなく、成功事例を積み重ねて社会の支持を広げていくしかありません。責任体制を明確にして政策を再起動しなければ、めったに使われないパソコンに巨額の税金を費やし、子どもたちの教育機会を奪うことになってしまいます。

(2022年2月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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