厚生労働省は、不妊治療を行う夫婦に、子どもを育てる別の選択肢として、里親・特別養子縁組の情報提供をしています。情報提供を強化する背景には、里親・特別養子縁組を希望する人の多くが、不妊治療で子どもを授からなかった経験を持つという現状があります。里親や養親となるには、研修が必須で、子どもの性別や障害の有無は選べないこともあるなど、制度の理解を助けるパンフレットも作る予定です。
親と暮らせない子どもは約4万2,000人に上り、大半は児童養護施設や乳児院などで保護されています。国は、2017年に児童福祉の基本方針として、施設から家庭へを掲げ、里親や養親と暮らす子どもを増やすよう転換を図っています。国は、里親での養育を数年以内に年齢に応じ50~75%にする目標を掲げていますが、現在は22%止まりです。米国82%、英国73%に比べて低い水準です。また、里親以上に永続的な親子関係を築ける特別養子縁組については、数年以内に年1,000件を目標としていますが、2020年度でまだ693件に過ぎません。
情報提供により、不妊治療の長期化で心身に負担を抱える人にも、別の選択肢を示せる可能性が出てきます。日本産科婦人科学会によれば、1回の治療で出産した割合は30歳代半ばまでは約20%で、40歳では10%に下がってしまいます。里親や特別養子縁組についての情報を、体外受精を始める前などに不妊夫婦に提供することも大切です。子どもを授かる見込みが低くなっても治療を諦めきれない人もいます。早いタイミングで様々な選択肢を知ってもらうことが必要です。
不妊夫婦への情報提供により里親や養親になろうと考える人が増えれば、家庭での養育費が必要な子どもと結びつきやすくなります。医療と福祉の連携が成功のカギとなります。
(2022年2月2日 読売新聞)
(吉村 やすのり)