新型コロナのワクチン接種は、感染後に体調不良が長く続く後遺症を防ぐことにもつながるとの研究結果が、海外で相次いで報告されています。英健康安全保障庁は、ワクチン接種と後遺症に関わる世界の研究論文15件について検討した結果、事前に規定回数のワクチンをうつことで、感染しても後遺症を起こす割合をほぼ半減でき、その効果は60歳以上の高齢者でより高く、35歳以下の若い世代では低いとしています。
イスラエルの研究によれば、ワクチンを事前に2回ないし3回うって感染した人は、未接種で感染した人に比べ、後遺症を起こすリスクが疲労感で64%、頭痛で54%、手足の筋力低下で57%、筋肉痛で68%、それぞれ低くなっています。後遺症を既に起こした人を対象にしたフランスの研究によれば、ワクチンをうった人ではうたなかった人に比べ、後に症状が消える割合が2倍高くなっています。ワクチン接種は、感染に伴う長期的な影響を減らすのにも役立つ可能性があるとしています。
後遺症の原因については、ウイルスまたはその断片が、検査では見つからない形で体内のいずれかに潜んで悪さをし続ける、感染をきっかけに体の免疫の状態が異常になり、その状態が長引くといった仮説があります。ワクチンを事前に、あるいは後遺症が出た後にうったりすることで、感染してもウイルスやその断片がより排除されやすくなったり、免疫の異常が起きにくくなったり、正常に近づきやすくなったりする可能性が指摘されています。
不明な点も残っていますが、ワクチンによって発症や重症化だけでなく、後遺症も減らせる可能性はあります。既に2回接種した人も、より早く、3回目の接種を受けることが大切です。
(2022年2月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)