性同一性障害特例法に基づき男性から性別変更した女性が、凍結保存していた自身の精子を用いて女性パートナーとの間で、子どもをもうけました。この子どもを認知できるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京家裁は、法律上の親子関係を認めることは現行の法制度と整合しないとして請求を棄却しました。
性別適合手術を経て2018年に戸籍上の性別を男性から変更した40代女性は、手術前に凍結保存した精子を用い、パートナーの30代女性が2018年に長女(3歳)、2020年に次女(1歳)を出産しました。2人は事実婚状態で、40代女性は、2021年に子どもとの法的な親子関係を生じさせるため、東京都内の区役所に認知届を提出しましたが受理されませんでした。
判決では、生物学的には2人の父親と認められるが、法律上の親子関係と血縁上の親子関係は必ずしも同義ではないとしています。特例法に基づき性別変更をした女性を父親として扱うことはできないとしています。また、妊娠、出産していないことから、母親にも当たらないとしています。
現行法では、同性カップルの婚姻は認められません。性同一性障害においては、性別変更後の異性カップルの婚姻は特例法により認められています。明治時代に制定された民法は、父は男性、母は女性という性別二元論に基づいています。今後様々な形態のカップルが現れると考えられ、従来の男女を前提とした家族のかたちに合わない人々を切り捨てないような法制度も考える必要があると思われます。
(2022年3月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)