人工光合成に関する研究開発

人工光合成は、太陽光を使って水を水素と酸素に分解し、つくった水素とCO2で有機物をつくります。植物の光合成の働きを人工的に行うことです。分解は太陽光を吸収する光触媒か、電極を使う2つの方式が主流となっています。CO2は工場などから集め、水素と反応させてプラスチック原料などを作ります。途中でできる水素や酸素は別の用途でも使うことができます。

人工光合成は、化石燃料の代替として1970年代のオイルショック前後に研究が盛り上がりましたが、オイルショックの後は欧米で下火になっていました。その後、2010年頃に欧米で再び注目が集まり、温室効果ガスの削減を国際合意した2015年のパリ協定で、推進機運が一気に高まっています。日本でも大手企業の参画により再び研究開発が活発化しています。

資源が乏しい日本にとって、資源を創り出す人工光合成は夢の技術です。実際、光触媒が水を酸素と水素に分解する本多・藤嶋効果を発見した東京理科大学の藤嶋昭栄名誉教授や、植物の光合成に必須となるタンパク質の結晶構造を解明した岡山大学の沈建仁教授などノーベル賞候補と言われる重要な成果を発表した研究者も多くみられます。日本では人工光合成の研究が続けられ、その後の技術優位を生んできました。
しかし、近年人工光合成の研究開発で日本の地位が低下しています。三井物産戦略研究所が独情報サービスのパテントサイトなどのデータを使って調べたところ、2022年1月時点で、日本の関連の有効特許数は中国の半分以下となっており、特許の質も向上しています。これまで世界をリードしてきたと言われる日本ですが、決して安泰とは言えない状況です。

(2022年3月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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