マイナビとマイナビ転職の調査によれば、東京離れがじわじわと進んでいます。2022年卒業予定の大学生を対象に実施したアンケートで、Iターン就職のように地方で働いてみたいという回答は全体の43.2%で、その割合は前年から3.5ポイント増の57.0%に上り、東京以外の都市に住みたい学生も3割程度います。半面、東京に住みたいは、2.4ポイント減の12.7%にとどまっています。
転職対象者の調査でも、コロナの影響で転居を検討した人は若年層ほど多く、20歳代では男女とも3割以上を占めています。地方で就職・転職したい理由では、家族と一緒に暮らしたい、地元のために働きたい、必ずしも都市部に住む必要性を感じなくなったなどの回答が上位に入っています。
オンラインや在宅勤務などコロナ禍を受けた新常態の浸透で、働く場所の選択肢が格段に増え、物価が高く生活ストレスも多い大都市を離れて地元や好きな街への志向を加速させています。病院・商店への近さを求め、都心部回帰が進む高齢者とは対照的です。
人口減・高齢化に直面する地方は、若者らの移住誘致に積極的であり、様々な支援・優遇制度を導入する自治体も多くなっています。学生の地方志向には受け入れ側からの追い風も吹いています。大量採用の中心だったメガバンクも、DXの進展で採用数を減らす方向が強まるなど急速に風景が変わりつつあります。コロナ禍は、地方にとってはメリットになるかもしれません。
(2022年3月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)