先天性の心臓病がある赤ちゃんは、出生数全体の1%程度です。近年は手術などの治療が発達し、命をつないで成長する例も増えています。胎児の段階で治療するには、いかに早く正確に赤ちゃんの心臓の異常を見つけるかであり、赤ちゃんの心臓の形や動きを見て異常を調べる心エコー検査が重要です。
最近、国立成育医療研究センターで先天性重症大動脈弁狭窄症の胎児治療が実施されました。この病気は、心臓の左心室の出口にある弁が狭くなってしまう病気で、生まれてくる赤ちゃん1万人のうち、3.5人に見つかります。赤ちゃんがお腹の中にいる間は、お母さんの胎盤からの血液を通じて酸素をもらっているので問題は生じにくいのですが、生まれてからは肺呼吸をすることになって、心臓から血液がちゃんと送り出されないと、心不全を起こして命にかかわることになってしまいます。
さらに、弁が狭いために子宮内で左心室が正常に育たず、生まれてからも機能が果たせなくなる左心低形成症候群という病気につながる可能性もあります。この病気になると、出産直後から3歳ぐらいになるまでに、いくつかの大きな手術を受けなければならず、胎児段階で手術することができれば、予防にもつながると期待されています。
先天性の心臓病の胎児治療は、他にも進んでいる事例があります。胎児頻脈性不整脈では、1分間に120~160ぐらいの脈が、300ぐらいにまで頻繁に打つ病気です。放置すると、胸やお腹に水がたまったり、全身が浮腫んだりする胎児水腫になって、命に危険が及ぶ場合もあります。母親に抗不整脈剤を投与する臨床試験が実施されています。9割の赤ちゃんで頻脈性不整脈を改善することができたとされています。
(2022年3月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)