日本は、戦後の高度経済成長を支えてきた新卒一括採用、終身雇用制度がまだ残っています。2020年時点の日本の労働者の平均勤続年数は12.5年です。4年前と比べて0.2年短くなっていますが、米国の4.1年、英国は8.6年などと比べて長くなっています。しかし、新型コロナウイルス禍で、経営難に陥る大企業を見た若者の安定志向が変わり、早くスキルを身につけられるスタートアップ志望が増えています。
日本の転職市場が変わってきています。大企業からの転職者は3年前に比べて7倍に増えています。スタートアップが、成長に必要な人材を好待遇で採用するようになり、帰属意識が強かった40歳以上にも動きが広がっています。人材の再分配と適材適所が進めば、産業の活性化にもつながります。
スタートアップの求人のうち、年収1,000万円超は2割を超え、上場企業(1割強)を上回っています。既存の給与制度に縛られる上場企業に比べ、スタートアップは機動的な投資で、必要な人材を確保しています。スタートアップが提示した平均年収は、2021年4~9月に804万円と4年前より2割上がっています。上場企業の平均も上がっていますが、差は当時の38万円から15万円まで縮まっています。
2021年の転職決定者のうち、40代は34%と20代を上回っています。40代以上のミドル層は48%と半数に近づいています。豊富な経験を持つミド層が、若手中心のスタートアップに加わることで成長が加速する可能性も高まっています。
(2022年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)