熊本大学の研究グループは、マウスのES細胞(胚性幹細胞)を使い、複雑な腎臓の組織を作ることに成功しました。腎臓は血液を濾過する組織であるネフロンや、尿を通す枝分かれした管が複雑に入り組んでいます。これまでES細胞からネフロンや管に変化する細胞を作製していましたが、今回、これらの組織を支える間質の元になる細胞の作製に成功しています。3種の細胞を組み合わせて培養し、1.5㎜大の腎臓組織を作製しました。
この組織にマウスの血管をつなぐと成長することも確認しています。しかし、濾過した尿を膀胱に送る管が未完成で、さらに研究が必要とされています。チームは将来、iPS細胞を使った人間の腎臓の作製も目指しています。
腎臓は、血液を濾過し、老廃物を尿にして捨てる重要な臓器です。腎臓の働きが落ちると命にかかわり、人工透析を受けなければなりません。しかし透析は体の負担が大きく、移植できる人工腎臓ができれば理想ですが、組織が複雑で作るのは難しいとされてきました。腎臓はこれまで一部の再現にとどまっており、大部分を作れたのは画期的です。
(2022年3月13日 読売新聞)
(吉村 やすのり)