新型コロナの影響でがん検診を受ける人が大幅に減っています。日本対がん協会では、毎年全国42支部で約1,100万人のがん検診を実施し、約1万3千人のがんを発見しています。パンデミックが始まった2020年は、胃、肺、大腸、乳房、子宮頸部の5つのがんの集団検診の受診者が前年より3割も減っています。
がん関連の3学会と協力して2021年7月~8月に実施したアンケート調査によれば、2020年にがんの診断件数は8万660件で、2019年より約8千件(9.2%)も減っています。日本全体でがんが未発見だった人は、約4万5千人に上ると推計されています。国立がん研究センターが公表した2020年にがんと診断された患者は、全国約600施設で約6万人減少していました。集計を始めた2007年以降で初の減少でした。特に2020年は早期がんを中心にがん診断件数が減少しています。
全国では、2020年だけで数万人規模のがんが見逃されている恐れがあります。2021年も受診者は例年より2割弱減っているとみられ、未発見の患者は多くなっています。がんは体の中で発生した早期では、自覚症状がない場合がほとんどです。診断された患者では、概ね早期の患者が減少しています。今後、自覚症状が出て進行した状態で見つかる患者が増えると思われます。早期発見・早期治療ができなければ、結果として治療成績は下がってしまいます。
日本では新型コロナの感染が確認されたのは約2年間で500万人超で、このうち亡くなった人は2万人余りです。一方で、新たにがんと診断される人は年間で約100万人で、亡くなる人は年間約38万人です。検診は予約制が広がり、施設内の感染対策も強化するなど3密にならない対策をしています。コロナを恐れて検診を受けず、発見が遅れてがんで亡くなることは避けてほしいと思います。
(2022年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)