国際連合食糧農業機関の報告書によれば、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億tが毎年廃棄されています。農林水産省によれば、日本の食品ロス量は、平成30年度まで毎年600万t台で推移し、東京ドーム5杯分に達しています。国民1人当たりでは、毎日茶碗1杯分を捨てている計算です。
食品流通業界で、長年浸透してきた3分の1ルールと呼ばれる納品に関する商習慣を見直す動きが加速しています。まだ食べられる食品の大量廃棄につながるとされ、11年前の東日本大震災などを機に見直しの機運が高まっています。
3分の1ルールとは、商品の製造日から賞味期限までを3分割し、最初の3分の1までにメーカーや卸業者が小売店に納入、次の3分の1までに小売店が消費者に販売します。納品期限までに卸業者の倉庫から小売店に納入されなかった商品はメーカーへ、販売期限までに消費者に売れなかった商品は卸業者へ、返品そしてその後廃棄されます。海外にも同様のルールがありますが、米国は2分の1、欧州は3分の2が多くなっています。
ルール緩和をはじめとする供給網の適正化へ、官民が本腰を入れ始めてきています。令和元年度のロス量は、前年度の5%減に当たる570万tで、推計開始以来最少となっています。政府は2030年度に、事業に伴うロス量と各家庭から出るロス量を合わせて、980万tだった2000年度の半分に減らすことを目指しています。
(2022年3月15日 産経新聞)
(吉村 やすのり)