大学間の単位互換制度の活用

在籍大学以外の大学で授業を受け単位取得できる単位互換制度の活用の動きが広がっています。制度の趣旨は、教育内容の充実に資するためでしたが、大学の財政事情が厳しさを増す中、人材や資金の効率活用という視点もうかがえます。大学間交流の促進も期待できるとして、授業の一部を有償で他大学に委託する例も出てきています。
東京医科歯科大学は、4月から1年生の必修科目である第2外国語のうち、フランス語の授業を東京外国語大学に有償委託します。単位互換制度に基づく取り組みで、仏語を選択した学生は、オンラインで東京外国語大学の授業を視聴します。東京医科歯科大学の学生は、東京外国語大学では特別聴講学生という立場で、東京外国語大学のオンライン学習システムにも入れます。
医療系に特化した東京医科歯科大学の学生数は、1学年につき270人ほどと総合大学に比べて少なく、医療系の専門科目以外で多彩な授業を用意するのは難しくなっています。医療系の学生は専門科目の授業に追われ、単位互換制度があっても利用しづらいの実情でした。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに広がったオンライン授業も委託の決め手になりました。
単位互換だけにとどまらず、全国では大学間で連携を強化する動きが相次いでいます。大学間の独立性を維持しながら、教養科目を共同開設して単位互換を広げたり、連携コースを設けたりすることもできます。文部科学省の2015年度のデータによると、国内の大学のうち単位互換制度を実施している大学は、全体の83.0%にのぼっています。大学設置基準では、互換制度で習得できる単位の上限は60単位と決められていますが、各大学が独自に上限を定めているケースもあります。大学に効率的な経営が強く求められる中、こうした取り組みは増えていくと思われます。

(2022年3月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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