地球温暖化に伴う海面上昇に備え、都市の沿岸部にある重要インフラの防御を固める動きが世界で始まっています。埋め立て地の空港は、高潮や高波に脆弱で、コンテナ港や発電所なども対策を迫られています。未来の脅威を見据え、開発基準の見直しや敷地・堤防のかさ上げが進んでいます。
世界にある中規模以上の5,014空港の15%、753空港が海抜10m以下でした。仮に海面が現在より1m上昇すれば35空港が、3m上昇すれば224空港が海面以下になってしまいます。
空港のリスクを現在のレベルに保つには、堤防の建設や敷地のかさ上げが必要となります。英ニューカッスル大学の研究グループによれば、堤防建設だけでも、2100年までに世界全体で390億~570億ドル(4兆6,000億~6兆7,000億円)に上ると推定しています。海面上昇のスピードや経済的な資源の制約などによっては、いくつかの空港は存続できなくなるだろうと予想しています。
国内の中規模以上の89空港のうち、25空港が海抜10m以下です。中部国際や那覇、仙台など17空港が7m以下、佐賀と岩国の2空港は3m以下です。日本政府は、2021年に気候変動への適応計画を策定し、今後、空港や湾港の具体的な対策に乗り出します。堤防や敷地のかさ上げには巨額の費用を要するため、長期的な視点で検討が必要になります。どこまで海面上昇を想定し、どこまでコストをかけて対応するのか、長期的な計画づくりが求められます。
(2022年3月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)