コロナ禍の収束に向け、新たな変異型が生じても効果のあるワクチンが求められています。新型コロナウイルスの複数の変異型に効果のある汎用型ワクチンの開発が進んでいます。汎用型は、新型コロナウイルスの様々な変異型や、既存のコロナウイルスに対して効果がある次世代ワクチンです。
開発中の汎用型には主に2つのタイプがあります。一つは核酸のメッセンジャーRNA(mRNA)を使います。汎用型では、複数の変異型に共通するスパイクの部位を狙えるようにmRNAを設計する取り組みが進んでいます。もう一つのタイプは、フェリチンというナノ粒子を使います。フェリチンは、体の中で鉄分の輸送などをする役割のたんぱく質です。このナノ粒子の表面にウイルスのスパイクたんぱく質を付けて、ワクチンとして投与する仕組みです。ナノ粒子はウイルスと形や大きさが似ており、強い免疫反応を起こします。
しかし、汎用型のワクチン開発が順調に行くかは分かりません。変異の影響を受けにくい効果的な抗体をたくさんつくらせるのが難しいとされています。変異しにくい部分だけをワクチンに使おうとしても、構造が安定しないため、体内で狙った抗体を誘導するのは簡単ではありません。
今後現れる変異型など様々なコロナウイルスに効果があるワクチンを開発できれば、新型コロナだけでなく、将来の新たなコロナウイルスによる感染症の大流行の予防に役立ちます。汎用型の開発は国際的に盛んで、米国立衛生研究所は40億円以上を投資しています。
(2022年3月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)