国際共同治験の必要性

国際共同治験とは、複数の国や地域で世界同時的に実施する臨床試験のことを言います。各国で個別に実施する従来型の治験に比べて、治験参加者を集めやすく、新薬開発の迅速化につながるとされています。様々な人種の患者を登録し、治験薬を投与できることから、民族差も把握しやすいとされています。新薬の投入が一部の国で遅れるドラッグ・ラグの解消も期待できます。
国際共同治験は、2000年代に入り急激に増加し、多くの患者を登録する必要がある抗がん剤開発などにおいて、最終段階の治験で活用されてきました。医薬産業政策研究所が2019年に発表したリポートによれば、2000~2018年までの国際共同治験の実施数では米国が首位です。ドイツなど欧州各国が上位を占めていますが、日本や韓国などのアジア諸国の組み入れは遅れています。
新興国でも国際共同治験への参加が増加しています。日米欧に比べて画期的な新薬の提供が遅れる傾向にあり、治験参加者を集めやすく、医師の人件費など先進国に比べて治験コストも少なくて済みます。近年は欧米の医薬品開発業務受託を中心に、ロシアやウクライナなど東欧諸国への治験募集も広がっています。
今回のロシアのウクライナ侵攻で、両国で国際共同治験の中断が続くと、新薬開発のスケジュールに遅れが生ずる可能性も出てきています。

(2022年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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