近年、研究開発に性やジェンダーの視点を入れることで、より良い技術革新を起こすジェンダード・イノベーションが重視されています。男性ばかりでやってきた分野での女性の活躍は、今後の伸びしろにつながります。しかし、学校基本調査によれば、工学系学部の女性比率は専攻分野別では最も低く、15.7%に過ぎません。女子学生が極端に少ない現状は受験者の半分を捨てているということになります。
全国の大学では、工学部に進学する女性を増やす様々な試みがなされています。名古屋大学は2023年4月入学の学生を対象とした学校推薦型選抜で、工学部の2学科に女子枠を設けます。名古屋工業大学は、産業界からの要請に応え、1994年度入試から電気・機械工学科に女性対象の推薦制度を設けています。
女性が増えることで、ものづくりの現場での女性の視点が増え、女性が混ざっているチームの特許の方が、経済的価値が高くなる結果も出ています。女性の視点が欠落していることは損失といえ、女性を増やしていくこと自体が社会貢献につながります。18歳人口が減る中、優秀な学生を確保するためには女性に志願してもらうことが欠かせません。
女子枠は不公平との批判もありますが、学校推薦型選抜や総合型選抜では、高校での成績や特定の大会への出場経験などを出願資格としてきています。大学としての考えを明示した上で、女性に限定するのであれば、問題はないと思われます。大学経営の視点からも、こうした動きが出てくるのは自然です。
(2022年4月10日 朝日新聞EduA)
(吉村 やすのり)